江益 凛2019年6月23日読了時間: 3分短編小説『アイネズ行進曲』> 衝動。衝動。衝動。 口に含んだ重ったるい水蒸気が 体を包み込む季節。 落ちてくる空に 手が届きそうなところまで来た。 後何度、呼吸をしたら、 この身が錆び付いて、 朽ち果てるのだろうか。 1秒でも長く存在したくて なるだけ、 呼吸を減らして生きてきた。 「あのさ、」...
江益 凛2019年2月22日読了時間: 9分短編『歪み』> マンションから駅まで。 これまで何往復しただろうか。 何度このドブ川を渡ったのか。 ふとした時。 私はこの川に スマホを投げ込みたくなる時がある。 24時間四六時中。 世界と私をつなぎとめる この手錠に嫌気がさすのだ。 知りたくないことも 全部伝えてくる...
江益 凛2019年2月16日読了時間: 4分短編『せめて、ハッピーエンド。』後編この物語は、 私の物語である。 そして、 この物語は全部嘘である。 これは、私が、 私のためについた嘘のお話。 **** 私が『君』を連れ回すようになった理由を 話そうと思う。 理由と言っても簡単だ。 私は、君のことが 好きだからである。 一年の頃から...
江益 凛2019年2月15日読了時間: 7分短編『せめて、ハッピーエンド。』前編 > 「私はね、ハッピーエンドが好きなんだ。人生って、ほら、辛いことばっかりじゃない?だからね、せめて、物語の中だけでも、幸せでいたいんだ」 スマホをスクロールする 右手の指は今にも千切れそうだった。 吐いた息は白く溶けていく。 今日、東京で、 初雪が観測された。...